e読書ラボ
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池澤夏樹著『クジラが見る夢』お試し版

2014/08/29 by mashita
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クジラが見る夢

株式会社ボイジャーより、電子出版された池澤夏樹著『クジラが見る夢』のお試し版を寄贈いただきました。

株式会社ボイジャーは電子書籍を読むためのビューワを開発するなど、技術面で活躍されている会社ですが、「作家や作家を目指す人が自身で電子書籍を出す道を開きたい」と電子出版支援システムの提供や、出版事業も始められたそうです。その第一弾として7月に池澤夏樹さんの著書が電子出版され、一部をe読書ラボに寄贈いただきました。

『クジラが見る夢』は、素潜り105mの記録を持つジャック・マイヨール氏(映画グランブルーのモデルのとなった人物)について書かれており、イルカやクジラと一緒に泳ぐ写真も多く掲載されています。海中の写真はとても綺麗なブルーで液晶端末との相性も良く、読み進めながらとても楽しめました。e読書ラボでは14ある端末のうち10の端末で読む事ができるので、液晶画面と電子ペーパーとの違い、画面の大きさによる見え方の違いなどを比べる事もできます。

電子書籍として出版された『クジラが見る夢』は、1994年にテレコムスタッフ株式会社から出版された『クジラが見る夢:The Days with Jacques』を底本としています。ご担当者からお聞きしたお話では、ボイジャーから電子出版するにあたり、それぞれの出版形態に合うようにと、著者や編集担当者などで校正を進め、底本とは一部異なる構成にしているそうです。電子書籍の装丁にあたる表紙画像も著者ご自身で決められたとお聞きし、こだわりが伝わってきました。

そんなお話をお聞きするうち底本にも興味がわいたため書店をまわりましたが、出版から20年経過しているため見つけられず、図書館で借りて読みました。テレコムスタッフから出版された『クジラが見る夢:The Days with Jacques』は30cmの大型本、写真は余白無しで紙面いっぱいに掲載されており、ボイジャーから出版された電子版に比べ冒頭の写真枚数が多く、そのほか随所にまとまって写真が掲載されていました。大型本の迫力ある写真もステキですが、電子書籍にした時の写真の美しさには著者の池澤さんも感動されたそうで、読者には文章を読んでもらいながら写真も大事に見てほしいと考えたそうです。そのようなことから、ボイジャーから電子版を出版される際は文章の途中に写真を挟むのではなく、章と章の間にPhoto Albumとして見出しを作り、再構成されています。写真を挿絵としてではなく、1つの作品として見る事ができるので、前後で文の繋がりを気にせず楽しめていいですね。

今回の寄贈を受けて、同じ本であっても出版形態に合わせて検討する、書店では手に入らなくなった本を復活させる、作家自身が本を作る、こうした取り組みは電子書籍が得意とする部分と改めて感じました。