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康煕字典 内府本(iPad App)

2011/09/28 by RyuheiAoki
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おそらく、電子書籍になっていなければ、実際に読んでみようとは思わなかっただろう。

以前、松岡正剛の『白川静 漢字の世界観』(平凡社新書)を読んで、日本における漢字の字体の典拠となっている康煕字典というものに興味を持ってはいたが、既に300年近くも昔の書籍であり、そう易々とお目にかかれるものではないと決めてかかっていた。
しかし、それが今やiPadで読めるというのだ。

購入価格は4,800円。電子書籍のなかでは高価なほうだと思う。紙の本でも購入に躊躇する値段だ。しかし、実はこの康煕字典、本来は全40巻からなる大著で、ページ数は計3,783ページ。保管にそれなりのスペースが必要だろうし、気軽に全巻持ち運べるという量ではない。もちろんそれ以前に、現存する原本はとても貴重なものだ。それが厚さ1cmにも満たない自分のiPadでいつでも気が向いたときに気軽に読めると思えば、安い買い物なのではないだろうか。

とはいえ、私のようなド素人にとっては、中身はかなり難解だ。冒頭にある解説を読むことで、康煕字典という書籍のおおよその要点は理解することができるが、実際にこれを字典として活用できるかというとかなり敷居が高い。しかし、そのような内容ながらも、当時の字体そのままにスキャンされた各ページを膝に乗せたiPadからただ眺めるだけで、その歴史と文化の一端は感じ取ることができる。目次や収録文字一覧から、知ってる漢字にジャンプして書かれている解説の分量を見たり、皇帝の名前に使われているため書き表せない文字を、筆画を減らして表現した、欠画という漢字の存在を確認するだけでもなかなか楽しいものだ。

電子書籍というと、とかく最近の本の電子化に目が向きがちだが、こういった歴史的資料の電子化こそ、貴重な文献への接点を広げるという意味で、ITの画期的な活用法だ。電子書籍がきっかけとなり、より一層原本にも興味が湧いてくる。

これからもこういった歴史的資料のさらなる電子化を期待したい。